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表紙とコラム Vol.145
刈込池(福井県大野市)

居酒屋で客が口々に「とりあえずビール!」と注文するのを見て、日本に来て間もない外国人が「とりあえず」という銘柄のビールはそんなに美味いのかと思わず店員に尋ねてしまったという笑い話があるそうです。

たしかに「とりあえずビール!」は今やビールを頼むときの決まり文句といって良いでしょう。ただ、この場合の「とりあえず」をどのような意味で遣っているのかは人によって違うような気がします。

たとえば根っからのビール好きは何がなんでも最初はビールという気持ちでこうした言い方をするのでしょうが、一方で「とりあえず」を別に飲み物は何であろうとかまわないという事情で使う人もいます。後者の場合は「いちおう」とか「まあなんとなく」というようなニュアンスです。これら2つの意味合いはまるで正反対ですが、大きな辞書などをひくと両方の説明が出ています。
とはいえ「とりあえず」の語源は「取るべきものも取らずに」というところにあるそうですから、本来は「何がなんでも」という思いで使うべきなのでしょう。優柔不断な言い回しでの「とりあえず」はビールのオーダー風景から生まれたのかもしれません。

ところで先日、仕事先で「とりあえず〇〇さんからお願いします」と声をかけられました。はたして私は頼りにされているのか、いないのか・・・ 「とりあえずビール!」が普及したおかげで日本語が複雑になっているように感じます。

刈込池(福井県大野市)
泰澄大師が白山に住む大蛇を閉じ込めた所と伝えられる、周囲400mほどの刈込池は、流れ込む小川はあるのに流れ出るところが無いという不思議な池です。静かな湖面に写り込む自然の風景に誘われ、紅葉の時期には多くのカメラマンが集まります。

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