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表紙とコラム Vol.123
東尋坊(福井県坂井市)

稚魚の不漁で鰻の価格が高騰する中、たいへん罰当たりな告白ですが、私は30年以上も前の高校時代、鰻の蒲焼をドブ川に捨てたことがあります。
私は野球部に所属していたのですが、大会の近い夏場はOB会から差し入れをいただくことがよくありました。普通はアイスクリームやジュースなのですが、なぜかその日届いたのは大量の鰻だったのです。あまりの想定外の出来事に私たちは色を失ってしまいました。

炎天下のハードな練習の疲れでなかなか鰻に箸がのびません。結局、私を含め大半の部員が無理やり何切れか口にしただけで、残りを近くのドブ川にこっそり処分したのでした。
「なんともったいない」と思われるかもしれませんが、泥まみれ汗まみれとなって体力を消耗している中で鰻はあまりに重すぎました。それにあの時代、鰻は高校生にとってあまり馴染みのない食材でした。コンビニや牛丼店などで鰻が販売される現代とは違い、夏のスタミナ食としての意識も薄かったのです。

そもそも江戸時代に平賀源内が「土用の鰻」を宣伝したのも夏場に鰻がさっぱり売れなかったからだと聞きます。本来は暑さで疲労した体にすんなり入っていくものではないのかもしれません。

さて、高嶺の花であっても鰻は今年もやはり人気です。しのぎがたい炎暑の中で鰻に食指が動くのはそれだけで体力、気力が充実している証・・・ 私たちは「暑さでぐったり」などとぼやいてばかりですが、言うほど弱っているわけでもないようです。

東尋坊(福井県坂井市)
日本海、北陸を代表する景勝地です。荒波に削られた奇岩が1km以上にも続き、五角形や六角形の柱状の岩が集まった輝石安山岩の柱状節理は世界的にも珍しいものです。 遊覧船(出航不定期)からの眺めはまさに自然の芸術と呼べるほど雄大です。

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