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表紙とコラム Vol.109
ゆりの里公園(福井県春江町)

米どころと称される石川県も市街地近郊では田園風景が年々減っており、私が利用するバス停のそばにあった小さな田んぼも今年、駐車場に変わってしまいました。
私にとって田んぼの表情を眺めることはバスを待つ短い時間のささやかな楽しみでした。植えられて間もない頃はひょろひょろとして頼りなかった稲が盛夏の頃には葉を青々と伸ばし、やがて秋の訪れとともに穂を出し重そうに首を垂らしていきます。そんな半年間の稲の生育にどれだけ心が和んだことでしょうか。そうした光景が見られなくなったことが残念でなりません。

ところで今年になって変わったことがもうひとつあります。私が使うバスの沿線には企業の新人研修施設でもあったのか、例年春になると真新しいスーツの一団が乗り込んで来たのですが、そんな面々に出会わなくなってしまったのです。
寝癖をつけたままだったり車内でネクタイを結んだりと学生気分が抜けきらず難儀していた新人たちが次第に社会人らしくなってくるのが6月頃で、車内で経済系の新聞に目を通すようになる彼らに私は密かにエールを送っていたのですが・・・・

バス停のそばの田んぼの消滅と同調するように姿を消してしまった若い人たち。
それは偶然とはいえ、私の朝の通勤は育っていく新米の様子を見届けることが叶わなくなり、すっかり季節の変化に乏しいものになってしまったのでした。

ゆりの里公園(福井県春江町)
福井県坂井市にある「ゆりの里公園」は、ユリを形どった交流ホールを中心に、15万輪のユリが咲き誇る公園です。 入場無料の園内には芝生広場やバーベキュー広場もあり、人々の憩いの場として親しまれています。 毎年6月のユリの季節にはイベントも行われ多くの人で賑わいます。

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