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表紙とコラム Vol.154
相倉合掌造り集落(富山県南砺市)

昔の鉄道時刻表には「洗」という記号が存在しました。 現代の鉄道事情では思いもつきませんが、ホームに洗面台がある駅にはこのような案内があったのです。まだSLが走っていた時代、煤(すす)で真っ黒になった顔や手を乗客はホームの洗面台で洗い整え人心地ついたのでしょう。

私はSLに関する実体験はありませんが、ホームにあった洗面台の記憶は残っています。SLが走らなくなってからも洗面台は1990年頃まではホームに残っていました。夏場などはそこで涼をとる人も多かったのです。

大学生の頃、東京と故郷を行ったり来たりするのに私は椅子席の夜行列車をよく利用しました。 混み合って座れないときには床に新聞紙を敷いて「くの字」になって眠ることもありました。そんなときは駅を降りてからのホームの洗面台がありがたかったものです。

さて、北陸新幹線の金沢開業が間近に迫りました。金沢と東京の間は最速で2時間28分。
大幅な時間短縮が沿線に様々な経済効果を生むとされています。もはや時間をかけて移動する旅のスタイルは過去のものになろうとしています。
けれどもスピードや経済性ばかりが優先される時代が本当に良いのかどうか。
従来ののんびりとした行程にこそ旅の醍醐味があったように私は思うのです。

夜汽車の疲れをホームの洗面台で癒す人たちの生き返ったような表情がこのところなぜか思い起こされてなりません。

相倉合掌造り集落(富山県南砺市)
富山県南砺市の相倉合掌造り集落は、毎年数回のライトアップが行われます。
今年の3月は5〜8日と14〜16日にも北陸新幹線開業記念のライトアップがあります。
5月、7月、9月、11月にもライトアップされ、昼間とは違った幻想的な風景を味わう事ができます。

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