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表紙とコラム Vol.119
石川県林業試験場 樹木公園(白山市)

私の知人が大学進学のため上京したのは1980年代前半でしたが、もっとも大都会に衝撃を受けたのは見上げるような高層ビルでも人混みでもなく、駅の改札風景だったといいます。
当時の改札ではパンチを持った駅員さんが洪水のように押し寄せる乗客の切符を神業のようにさばいていて、それを目の当たりにしたとき知人は「都会とはすさまじいところだ」と実感したようです。
私も昔の駅の様子は覚えていますが、今の自動改札機に比べると、たしかに超人的な切符切りが構えていた改札の方がエネルギッシュだったような気がします。

駅の改札に限らず、いつの頃からか無人の施設で機械を相手にすることが多くなりました。
人件費の削減はもちろん、多くの人たちがタッチパネルやキーボードの操作を苦にしなくなっているというのも背景にはあるのでしょう。

デパートのエレベーターもエレベーターガールが乗り合わせているところはごくわずかです。いまどきエレベーターの乗り方に不安を覚える利用客など皆無なのでしょうが、エレベーターガールが消えたデパートはどこか無機質な印象です。
たぶん知人が昔の駅の改札に都会の匂いをかいだように私もエレベーターガールに往時のデパートならではの行き届いたサービスを感じていたのだと思います。
無人化は時代の流れとはいえ、存在そのものが風景に溶け込んでいるプロフェッショナルがその波に呑みこまれていくことに一抹の寂しさを覚えずにはいられません。

石川県林業試験場 樹木公園(白山市)
芝生広場を中心に、多くの樹木が植えられた公園です。 中でも約150品種、1000本のサクラは見応えがあり、毎年多くの人がお花見に訪れます。 公園内には展示館や日本庭園、針葉樹林、広葉樹林などが配置され、遊歩道で結ばれています。

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