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表紙とコラム Vol.111
海王丸パーク(富山県射水市)

江戸時代、商家の奉公人がまとまった休みをもらえて親元に帰れるのは夏と冬の数日間だけで、これは「薮入り」と呼ばれていました。 休日だらけの現代からは想像もつかない過酷な労働環境ですが、その分帰郷中は濃密な時間を過ごしていたことでしょう。

それに比べると21世紀は里帰りの意味合いがかなり変化しました。
たとえば盆暮れの帰省客へのインタビューなどを見ていると、もっとも多く聞かれるのが「のんびりしたい」というコメントです。 もしも江戸時代の薮入りにそんな質問をすれば、返ってくるのは「親孝行したい」とか「晴れ姿を見せたい」などという答えばかりだったはずです。

ただ、そうやって故郷にくつろぎを求める現代人であっても、盆帰りにはまだ昔ながらの考え方が残っているのではないかと私は感じます。 そもそも「寝正月」という言葉はあっても「寝盆」などとは言いません。 やはりほとんどの日本人が仏事的な趣の強い盆の期間をだらだら過ごしてしまうことに抵抗を感じているのでしょう。 食べて寝ての繰り返しになりがちな正月と供養が第一となる盆は決定的に違うのです。 「のんびりしたい」などと言いながらもしっかり墓参から始める盆・・・
薮入りの遺伝子はここにわずかに受け継がれているような気がします。

海王丸パーク(富山県射水市)
「海の貴婦人」と賞賛された大型練習帆船「海王丸」を一般に公開しており、通常は畳んだ状態になっている29枚の帆は、年に数回の「総帆展帆」の日だけ、すべての帆が広げられます。 パーク内にはイベント広場や芝生の広場、ラジコン広場などのほか、海王バードパーク(野鳥園)もあります。

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