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表紙とコラム Vol.142
越前竹人形の里(福井県坂井市)

3月は卒業シーズンですが、最近はこの時期に限らず「卒業」という言葉がメディアで多用される風潮があります。典型的なのがテレビのバラエティ番組で、改編期に降板するアナウンサーやタレントが必ずといっていいほど「私は今日で卒業します」などと口にします。

かねてから私はこうした言い回しに違和感を持っていました。そもそもアナウンサーやタレントは番組の中で何かを学んでいるわけではありません。彼らは出演することによって報酬を得ているプロフェッショナルなのです。それが「卒業」という言葉を持ち出して身を引かれたのでは「私は素人同然だったのです」と言っているのと変わりなく、何だか視聴者側がバカにされているような気がしてしまいます。

それに比べるとスポーツの世界の最後は実に潔く「今日をもって卒業します」と宣言する選手など一人もいません。大きな覚悟があるからしっかりとした決別の辞がそこにはあります。

去りゆく者が学校でもないのに恥も外聞もなく「卒業」という言葉を遣うのは放送や芸能の世界くらいのものでしょう。いくら楽屋オチがネタとしてまかり通る世界とはいえ、ラストくらいはプロの矜持をみせて幕引きをしてほしいものです。

越前大野城(福井県大野市)
1575年、織田信長の命を受け、一向一揆が支配する大野郡を平定した金森長近が築城しました。その後江戸時代の大火により焼失、1795年に再建され、現在の姿には1968年になりました。大野城の内部には城主であった金森氏、土井氏などの遺品が展示され、資料館になっています。

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