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表紙とコラム Vol.114
那谷寺(石川県小松市)

レストランなどで料理を運んでくるウェイターのほとんどが去り際に「ごゆっくりどうぞ」という言葉を口にしますが、最近は空になった皿や器を下げにくるタイミングが昔に比べて早くなっているような感じがします。どうやら外食産業もこのところの不景気でスタッフが減らされ、食器を片付ける頃合いを計れなくなっているようなのです。しかし、遅いのも困りますが、あまりに早いのもせかされているようであまり気持ちの良いものではありません。

そういえば心理学上、食べ終わった後の食器を眺めることは視覚的な満腹感をもたらし食欲を抑制してくれるのだと聞きました。これは逆に言えば空になった食器が瞬く間に持ち去られてしまうと、食欲は永遠に満たされないという理屈になります。
海外経験のある知人によれば、欧米のレストランでの食器を片付けに来るスピードは日本と比較にならないくらい早いのだそうです。満腹感が得られず、無意識のうちに追加オーダーしてしまう客も少なくないといいます。欧米人に肥満が多いのにはそんな事情も関係しているのかもしれません。

私は絶妙の間合いで膳を下げる日本的な奥ゆかしさがもっと見直されてもいいと思います。
諸事情あるにせよ「ごゆっくりどうぞ」が空々しくならないよう食のプロフェッショナルの皆さんには目配りをお願いしたいものです。

那谷寺(石川県小松市)
小松市の那谷寺は高野山真言宗のお寺で、北陸の紅葉の名所としても知られています。 境内には国指定重要文化財の本殿や鐘楼、三重塔などがあり、山門から本殿の間にある「奇岩遊仙境」は、四季折々の草花で彩られます。 那谷寺の紅葉の見ごろは11月上旬から下旬までです。

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